当社で扱っているのは、土地から建物を開発する新築一棟開発投資です。新築一棟開発投資がどういったものなのか、以前こちらでご紹介させていただきました。新築一棟開発投資とは、法人様・投資家様にデベロッパーとなっていただき、中間業者を極限まで省くことで高利回りを実現する投資です。さらに、こちらでは具体的なメリットについてご紹介しました。
今回は、当社が新築一棟開発投資を行う上でのデメリットとも言える、リスクについてご紹介します。
1.リスクの種類
これまで、新築一棟開発投資にはリスクがあることをお伝えしてきました。新築一棟開発投資が従来一般的な投資手法ではなく、不動産会社による事業であったのは、こうしたリスクがあるためです。土地から開発を行う際には、予期せぬトラブルが起こる可能性があり、場合によっては数百万円単位の追加コストが発生するケースもあります。
では、そもそもどういったリスクがあるのでしょうか。大きくわけて、「土地に関するリスク」、「企画・建築に関するリスク」と「賃貸に関するリスク」の三種類が考えられます。
具体的には、建設予定地の敷地から地中埋設物(ガラ)が見つかる、天候により工事期間が大幅に延びる、施工会社の倒産という例も……完成した物件ではないからこその特有のトラブルが考えられます。しかし、リスクやトラブルのすべてを網羅して対策することは困難であると考えています。物件によっても異なりますし、事前に予期できない事象もどうしても起こり得ます。まずは、本記事において具体的なリスクのイメージを持っていただくとともに、どのようにそれらと向かっていけば良いのか、ご理解いただけますと幸いです。
2.土地に関するリスク
リスクのうちの一つとして、土地に関するリスクがあります。土地購入から始まる新築一棟開発投資では、建物の建築段階になって、はじめてわかることもあります。例えば、地中障害物です。当社では土地の販売までに、地中や地盤の調査を実施していますが、それでも地中内の状況全てを把握できる訳ではなく、土地購入時には判明しなかった予期せぬ障害物(ガラ)や湧水等が地中から見つかることもあります。障害物があると建築を進められない場合が多いため、撤去することやそれを避けて企画するなど追加の対応が必要となりますが、通常の工程に加えて大幅な撤去作業が必要となると工程の延長やコスト増加などデメリットが生じます。当社も土地の売主として責任があるため、費用負担等についてはある程度協議させていただくことは可能ですが、建築計画の変更等については物理的に避けられない事象であり、そのリスクを完全に除外することは難しくなってしまいます。
ただし、これも程度の問題ではあると考えています。建物が建築不可となるほどのリスクがないかという点は当社で事前に検証しますので、リスクが現実化しても解決できる範囲に収まるようにすることが当社による軽減策の一つとなります。
3. 企画・建築に関するリスク
次のリスクとしては、企画・建築に関するリスクです。当社が物件をご提案する際には、事前に当社推奨の施工会社より工事の見積を取得し、具体的な金額を提示いたします。基本的には提示された見積金額からブレがないようになるべく調整いただきますが、それでも以下の要因などにより金額が増額となる可能性もゼロではありません。
- 当社より提示する見積は、当社にて作成した建物図面、仕様書等に基づき各項目が算定されています。しかしながら、本当の意味で建物の企画が確定するのは、「設計」の工程が完了した後になります。設計の過程において建物の構造を微修正し、それが価格に影響を与えることもございます。
- 建物に関する法令、規制等は明文化されていないものもあります。当社の企画においては、なるべく網羅的に必要となる対応を盛り込みますが、それでも予期せぬ行政の指摘等を受けて追加対応が生じることもございます。
- 見積はあくまで見積であり、実際に建築の契約を締結するのは少し後のフェーズとなります。直近で特に顕著ですが、世界情勢に伴う資材高騰の影響を受けることがあります。施工会社もその影響を推測し、反映できるよう努力していますが、契約時点で想定よりも高騰しているようなケースも珍しくありません。
当社では専門的な知見、および過去の経験等を駆使し、施工会社の見積をただ鵜呑みにすることはなく、漏れがないか、楽観的な見込みになり過ぎていないかなど、その実現性をチェックすることでリスクを軽減しています。また、仮に増額が生じても、他を削減することによる調整の余地等も検討しますが、それでも可能性をゼロにすることは困難であるため、その点を認識いただく必要があります。
また、これは最悪のケースですが施工会社が倒産するリスクもあります。当社企画ではこれまで実例はありませんが、業界的にそういった事例が生じたことはございます。倒産してしまうと工事が続けられなくなるため、すぐにそれを引き継いでいただける別の施工会社に依頼するなど緊急の対応を余儀なくされます。こうした大きなリスクもあれば、近隣から工事に伴う重機や騒音に関するクレームを受けるなどの日常的なトラブルもあります。
4.賃貸に関するリスク
最後に賃貸に関するリスクです。賃貸経営においては、入居者がいて初めてお客様は収入を得ることができます。建物が完成しても空室状態が続くようであれば、意味をなしません。
これを空室リスクと呼びますが、空室リスクは本モデルに限ったことではなく、全ての賃貸物件に存在します。ですが、新築一棟開発ならではのリスクもあると考えています。
新築/中古、あるいは一棟/区分によらず、多くの場合完成物件は、入居者がいる状態で売買されます。もしくは現状では空室であっても入居実績があることがほとんどです。それは、すなわち賃料について市場で確立されたものであることの証左となりますが、新築一棟開発では、設定賃料はあくまで想定であり、その保証がないものとなります。
当社企画の場合、ご提案時にレントロールも作成しています。それは根拠のないものではなく、当社が企画したデザイナーズマンションにおける入居実績、最寄駅、徒歩距離等を総合的に勘案した試算に基づくものですが、それでも満室稼働に至るかどうか、そのスピード感については、「募集してみないと分からない」状況であることも事実です。あまりに空室が続くようであれば、フリーレントなどの追加費用負担、もしくは場合によっては多少の賃料減額などを検討せざるを得ないリスクがあります。
しかしながら、賃貸経営を成功に導くコツの一つは賃料設定を保守的にし過ぎない点にあるとも、当社は考えています。保守的な賃料設定にすれば満室になりやすいかも知れませんが、それは本来もっと高い家賃であっても満室になっていたかも知れないところを自ら値下げ販売してしまったことと同義です。相場の何倍もの賃料を設定することは現実的ではありませんが、多少ストレッチな設定をし、きめ細やかな、かつ効果的な募集活動に全力を注ぐことが大事だと考えています。
5.リスクを回避することは可能か?
ここにあげたリスクの多くは、建物が完成していない「土地からの開発」だからこそ起こり得るリスクです。すでに完成している物件を購入する際は、こうしたリスクは取り除かれた上で販売されていますが、当然その分のリスクを負担した開発者である不動産会社は、その対価を売買価格に上乗せします。利益を最大化するためにそうした中間業者を省くということは、その分のリスクを負う必要があり、それを完全に回避することはできません。
たびたびお伝えしている通り、法人様・投資家様にデベロッパーとなっていただく新築一棟開発投資を、ご自身のみで実施することは容易ではないと言えますが、その一番大きなハードルはこうしたリスクがあることはもちろんですが、その実態が想像もつかず、漠然と不安だけが募るという点ではないでしょうか。
それでは、リスクがあるからやらない方が良いのでしょうか。当社としては、そうしたリスクを超えるだけのメリットが「土地からの新築一棟投資」にはあると考えているからこそ、ご推奨していますし、多くの反響をいただき事業として成長しているものと認識しています。大事なのは、ある程度のリスクはつきものであるとご理解いただき、上手に付き合っていくことです。
冒頭でリスクは網羅できないとお伝えしましたが、当社がこれまで多数の物件を扱ってきた実績をもとに、発生頻度が高いもの、あるいは万一のときの影響度が大きいものはある程度推測することができ、リスク軽減する手立てを予め講じておくことが可能です。また、お客様と近隣住民、設計者、施工会社、あるいは入居者との間に当社が入ることで、コミュニケーションによるトラブルを軽減し、生じた場合でもより迅速に解決するお手伝いをすることが可能です。リスクをなくすことはできませんが、それを現実的な範囲に軽減、コントロールし、メリットを享受できるようプロジェクトを推進していくことが当社を活用いただく意義だと考えています。
<まとめ>
- 土地/企画/建築/賃貸それぞれにリスクがある
- リスクを完全に回避することは難しい
- ある程度リスクを推測し対処することは可能
- リスクを超えるだけのメリットが新築一棟投資にはある
山本 澪
慶應義塾大学大学院卒業後、ワタベウエディング(株)にプランナーとして入社。事業戦略に従事したのち、エムスリー(株)にてマーケティングソリューションの営業/集客を経験。東京レーベルに入社後、マーケティングを担当。
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